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Science Cafe 41

Bau und leben der Rhinogradentia
- Prof. Harald Stümpke -

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Flying Crustacean Found in Amber from the Upper Carboniferous of Illinois

Authors: Stulti Dies, Ernst Haeckel, Georges Cuvier

abstract

No invertebrates to evolve powered flight was known other than insects, which developed wings perhaps 90 million years before the first flight among vertebrates. Here we report a fossilized crustacean having putative wings from upper Carboniferous amber. It has 3-pairs of wings from 3rd to 5th thoracic somites and seems to be able to fly using these wings, so we propose a new taxon "Hexaptera". It has features both of branchiopod and maracostraca. Although there are two major hypotheses about how insects developed wings, the popular one is that wings are variations of gills. The wings of this fossil also seem to derive from gills, and it is a good example of parallel evolution within pancrustacean phylogeny.
[Full Text (PDF)]

石炭紀後期の琥珀から見つかった飛翔性甲殻類

2016年4月1日 文責: 卯月壱馬
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amber

イリノイ大学とオクラホマ大学の合同チームは「昆虫の翅に非常によく似た構造をもつ甲殻類の化石を発見した」と 3 月 27 日付の Journal of Arthropod Biology で発表した。
論文要旨[英文]

脊椎動物では3つの系統で独立に自力で飛翔する能力を獲得している。鳥類、コウモリ類および化石動物の翼竜類である。これに対して無脊椎動物では唯一昆虫の系統で、たった一度だけ飛翔能力の獲得が起きたと考えられてきた(*1)。

米イリノイ大学の Stulti Dies 博士らは、イリノイ州北東部にある3億年前の上部石炭系メゾンクリーク層の琥珀から保存状態の極めて良好な甲殻類の化石を発見した。 体節や付属肢の形態は鰓脚類、軟甲類の形質をあわせもっており、鰓脚類と軟甲類の直近の共通祖先から分岐したものと考えられた。 第3-第5胸節には昆虫の翅と非常によく似た構造物が一対づつ合計6枚付属しており、もともと鰓だったものが大型化したものではないかと推定された。 この甲殻類はこの「翅」を利用して飛翔することが可能だったのではないかと思われ、博士らは新たに「Hexaptera」という分類群を提唱した(京大名誉教授の日高敏隆氏は六翅類という邦訳を当てている)。

昆虫の翅の起源

昆虫の翅の起源には大きく分けて二つの説がある。ひとつは伝統的な「側背板起源説」、もうひとつは比較的新しい「鰓(エラ)起源説」である。(*2)

側背板起源説

昆虫の背中を覆っている背板の左右両側のことを「側背板」という。ここが徐々に伸張して、翅になったとする説。飛翔するのに十分な大きさになるまでは、翅は無用の長物となるばかりか、移動の邪魔になったり捕食者に狙われやすくなる。進化の途上で生存に不利になると考えられるため支持しない研究者も多い。

鰓起源説

水中の酸素を効率よく取り入れるために、鰓は徐々に大型化し水中で動かせるようになった。これが翅になったという説。実際、現生で最も原始的な有翅昆虫とされるのカゲロウの幼生は翅によくにた鰓をもっている。この説では鰓に走る気管を「翅脈」の起源としている。

化石記録では、4億年前のデボン紀には昆虫の翅がみつかっているがバラバラの状態であり、本体と一緒に完全な形で発見されたのは石炭紀末期のものが最も古い(*3)。この頃までには有翅昆虫の多様化はかなり進んでいたと見られている。しかし、今回の発見により、デボン紀にみつかった翅の化石は甲殻類のものであった可能性がでてきた。

甲殻類と昆虫の関係と平行進化

近年の節足動物の分子系統解析を行ったいくつかの研究(*4)から、昆虫類は甲殻類から派生したものと考えるのが主流となっている(汎甲殻類仮説)。飛翔能力の獲得は生物にとって難しい課題であるようだが、脊椎動物や汎甲殻類といった動物界全体からみれば比較的狭い範囲で複数回実現されているというのは興味深い。

汎甲殻類の内部の2系統では、もともと似たような形態や体制をもっていたため「鰓が翅へ進化する」という同じ過程を辿ったとみることができる。これは平行進化であるといえる。
一方で脊椎動物である鳥とコウモリの例は収斂進化の例としてよく教科書にも載っているが、「内部に硬い骨をもった前肢」、「陸上への適応」といった共通祖先に由来する形質が前肢を翼に進化させるきっかけになったともいえる。このように考えると脊椎動物という狭い範囲で独立に飛翔能力を獲得している現象は、収斂進化というよりむしろ平行進化というべきであろう。(更に詳しく)

注釈*

1) ただしアカイカ科の若齢個体が有る程度能動的な飛行能力を有していることが北大等の研究でわかってきている

2) 昆虫の翅の起源については筑波大学菅平高原実験センターの町田龍一郎教授のページを参考にした

3) マサチューセッツ州の泥岩層からみつかった最古の有翅昆虫の印象化石

4) 節足動物の系統解析を行ったNatureの2010年の論文を紹介しておく

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